6回目は創業1847年、鎮痛消炎貼付剤を中心とした医薬品を提供し、
「貼る治療文化」を世界に広める「久光製薬株式会社」(鳥栖市)です。
専務取締役執行役員の杉山耕介氏に聞きました。
選択肢の幅を広げることが鍵
【杉山】女性は結婚・出産などライフイベントが大きく影響します。キャリア継続のためには、働き方の選択肢を増やし、幅を広げることが大事です。選択肢が目に見えるように制度化することが会社の役割だと思います。
当社では営業職の社員が結婚時に、配偶者と同居できるよう担当地域に異動することを認める「結婚時勤務地申請制度」や、育児や配偶者の転勤、介護などで退職する社員が復職を望む場合、希望を登録できる「再雇用登録制度」、妊娠中、体調管理のための休暇を取得できる「マタニティ休暇制度」、保育料を一部補助する「保育料サポート制度」など独自の制度を整えてきました。
【杉山】 産休・育休取得後のスムーズな職場復帰に力を入れています。ウェブを通じた産休・育休取得者同士や先輩ママ社員との情報交換や専門医による医療相談、職場復帰に向けた心構えが学べる通信教育などの「産休・育休者能力アップ支援」を整えています。
女性の意識と組織風土の醸成が不可欠
【杉山】 全従業員に占める女性の割合は約3割ですが、管理職は約3%です。そこで「ヒサミツ・ウィメンズ・リーダー研修」を行い、女性管理職の育成を進めています。
一般的に女性管理職の登用は男性の代わりと考える人もいますが、それは違います。たとえば、AとBの選択を迫られた時、男性はどちらか一方を選ぶかもしれませんが、女性にはAとBの間を取るような、新たな選択肢を見つけ出す思考の柔軟さがあります。それがよい解決策だったりしますね。会社の成長には、女性が持つ多様な価値観、暮らしに根ざした考え方が必要です。そのためには多様化した価値観を企業の組織風土に醸成させると同時に、女性も男性とは異なる視点をアピールすることが大切だと思います。
【杉山】当社は2010年、育休から職場復帰した女性社員が安心して働けるように、厚生労働省の助成金を利用して九州社内に事業所内託児所「さくらさく保育園」を開設しました。現在約20人が通っています。
ただ、補助制度については、補助期間や経営面での規制があり、また、運営についても企業負担が大きいと感じます。行政からの支援がもっと充実すれば、事業所内託児所を導入する企業も増え、女性も安心して働くことができるようになり、活躍する女性ももっと増えていくのではないでしょうか。